2018.08.29
バセドウ病眼症への放射線治療
急性期のバセドウ病眼症に対する治療は、ステロイドです。点滴で全身に投与するか、直接まぶたに注射を行います。
それと同時に行いたいのが放射線治療です。
ヨーロッパの学会では35歳以上の眼症の方には放射線治療を進めるべき、とされています。
ただし明らかな効果があるわけではなく、再発予防、くらいの意味合いです。
放射線治療と聞くと、怖いものと思われるかもしれません。
が、実際にすることは大したことはありません。
痛みはありませんし、照射自体もすぐに終わります。白内障・放射線網膜症・緑内障などの眼球への放射線障害についての説明を受けるとは思いますが、照射範囲に眼球は入っていないため、実際にはほぼこのような合併症は起こりません。
いままでバセドウ病眼症の患者さんを診てきて、明らかな放射線障害は見たことがないのです。
照射線量も癌への照射にくらべて3分の1程度の非常に少ない量しか行いません。
このため発癌性も十分に抑えられていると思います。
ただ2つだけ留意する点があります。
1つ目は、放射線治療は平日10回通わないといけないので時間的コストがかかるということです。
平日10回、つまり2週間まるまる平日に通い続ける必要があります。
その前に照射時に顔を固定する器具を作らないといけないため
そのための通院も数回必要です。
現役世代にとってはとても大きな負担になりえます。
2つ目は、放射線を当てる量が少ないといっても、放射線で組織を焼くので、放射線による急性期障害でまぶたが腫れる、赤くなるということが起こり得ます。
これを軽減するために、放射線治療を受けるときにはステロイド治療を行っている時期に合わせて行うようにします。
再発する方が出来るだけ少なくなると良いと思います。
2018.08.26
バセドウ病眼症の点滴治療・負担の少ない治療を求めて
1つのことにこだわること。
石の上にも3年、なんて言葉に代表されるように、我慢・忍耐というのは我々日本人の美徳とされるところです。
これは日本人の良い面ですが、一方で悪い面にもなりえます。
一度決めたら、間違っていても容易に方向転換することが出来ません。
米国には、微塵もそのような美徳はありませんでした。
どうやら日本人は同調圧力の強い国民性のようですが
最近読んだ本には遺伝子レベルでそういう国民だということが書いてありました。
ヒトは「いじめ」をやめられない (小学館新書) 新書 中野 信子 (著)
バセドウ病眼症の治療、急性期にはステロイドを行うのですが、
オーソドックスな投与方法は、メチルプレドニゾロン1000㎎を週に3日間×3週間、入院して行うというやり方です。退院後はプレドニゾロン内服に切り替えて、3か月から6か月程度かけて中止します。
おそらく全国のほとんどの施設でこの投与方法のはずです。
何十年前から続く、伝統のやり方です。
バセドウ病眼症は現役世代に起こる病気ですが、
入院期間が長いため時間的・金銭的コストが問題となります。
さらにプレドニゾロン内服はメチルプレドニゾロン点滴に比べて満月様顔貌や高血糖、不眠など副作用が多いことが知られています。
点滴は外来で出来ればよいし、内服は出来るだけしないほうがよい。
このことからヨーロッパの学会のガイドラインでは週に1度、通常の半量となるメチルプレドニゾロン500㎎を勧めています。
当院でも、これに則った治療を行っています。
活動期のステロイド点滴は、週に1度。
ヨーロッパの学会と異なるのは、決められた期間続けるということでなく、
点滴をして改善がみられている限り行うということです。
ステロイド治療が効くということは、炎症があるということ。
ステロイド治療が効かないということは、炎症がないということです。
このため、効果がある限り点滴を続けていく方針で、診療を行っています。
さらに、点滴をするペースについてです。
通常、点滴は2-3時間で終了します。
高容量のステロイドなので、薬剤濃度が急にあがることを避けるためです。
ただし点滴に使用するメチルプレドニゾロンの添付文書には10分未満の時間での投与は避けることと書いてあります。
長い時間をかけなければいけないとは書いていないのです。
このため当院では約15分程度で滴下するようにしています。
これであれば現役世代の患者さんたちも通院できる。
仕事の合間に来ることも出来るかもしれません。
出来るだけ負担の少ない治療が提供できれば良いと思い
日々考えています。
昨年度実績2000件(うち眼瞼下垂手術941件、眼窩減圧150件)
群馬大学 眼科 非常勤講師
帝京大学 眼科 非常勤講師
涙道涙液学会 理事
アジア太平洋眼形成学会 理事
オキュロフェイシャルクリニック東京 中央区銀座1丁目ビル8F
03-5579-9995
http://www.oc-tokyo.com/
2018.08.24
バセドウ病の無い方への眼窩減圧術
いままでバセドウ病眼症に伴う眼球突出と
それに対する治療を書いてきました。
バセドウ病という名称は皆さんご存知なので使ってきましたが
実際には橋本病など他の甲状腺疾患があっても眼症は起きるのです。
なので医師向けの文章には「甲状腺眼症」(TED;Thyroid Eye Disease)と書きます。
ですが、病気とは別に、生来目が大きい方々がいらっしゃいます。
普通に考えれば目が大きいのは良いことのようにも思えるのですが
大きいことがコンプレックスになる場合があります。
何度採血しても甲状腺ホルモンの異常はないし
突然、目つきが変わったわけでもない。
でも自分の大きい目を治したい。
そういう方がいらっしゃるんです。
いままでに数人、甲状腺疾患の発症の確認できなかった方々に減圧を行ってきました。
ただし、この場合、健康保険は使えません。
当院では、自費治療として手術を承っています。
ご興味のある方は一度ご相談ください。
昨年度実績2000件(うち眼瞼下垂手術941件、眼窩減圧150件)
群馬大学 眼科 非常勤講師
帝京大学 眼科 非常勤講師
涙道涙液学会 理事
アジア太平洋眼形成学会 理事
オキュロフェイシャルクリニック東京 中央区銀座1丁目ビル8F
03-5579-9995
http://www.oc-tokyo.com/
2018.08.23
バセドウ病眼症の
眼球突出への手術は
健康保険の適応になります。
バセドウ病について
バセドウ病では、病気によって眼球突出が起こります。これにより、ドライアイ、逆さまつ毛、球後痛、斜視、視力低下、そして醜形などを起こします。活動期の治療は点滴や局所注射などのステロイド治療ですが、発症から約1年が過ぎ、非活動期になってしまった場合には眼窩減圧術の適応になります。
眼球突出と保険適用
患者さんから、「保険適応ですか?」と聞かれることがあります。眼科医からも同様の質問受けることがあります。当院では、一時期に顔貌の変化があるなど眼症の発症が明らかであった場合には、健康保険を使用して手術を行います。
バセドウ病の眼球突出は、まさに病気による変化ですので、健康保険の適応にならないとおかしいと思いますし、いままで保険が通らなかったことはありません。
バセドウ病は、青年期から壮年期に好発する病気です。発症すると内科へも眼科へも通院が必要になります。
仕事などで忙しくしている年代の患者さんたちに、時間的なコスト、金銭的なコストがかかる病気です。
我々の年代は、毎月税金のように健康保険の代金が徴取されています。ほとんどのお金は高齢者の医療に使われている筈で、保険のシステムを支えているのは我々です。病気になった時に健康保険が使えないのであれば健康保険を支えている意味がないとすら思います。
昨年度実績2000件(うち眼瞼下垂手術941件、眼窩減圧150件)
経歴
群馬大学 眼科 非常勤講師
帝京大学 眼科 非常勤講師
涙道涙液学会 理事
アジア太平洋眼形成学会 理事
医院名
新前橋 かしま眼科形成外科クリニック
住所
群馬県前橋市古市町180−1
電話番号
027-288-0224
公式サイト
こちらから
2018.08.12
遠方の方々への眼窩減圧術(オペツアー)
遠方の方々への眼窩減圧術の流れについて記載させていただきました。
当院ではオペツアーと称しています。
詳細は以下をご覧ください。
https://ameblo.jp/kashitomo52/entry-12395961924.html
2018.08.03
皮膚を切らない目の下のたるみの手術
加齢とともに出現する目の下のたるみ。
これがあると疲れているようにみえてしまいます。
そしてこれは凹凸であるため、化粧では誤魔化せません。
当院では私がUCLA留学中に学んだ、最先端の皮膚を切らない眼窩脂肪移動術を行っています。
動画を作りましたので、ご興味のある方はご覧ください。
※手術動画を含んでいます。
https://youtu.be/uERcvVOiAKg